ヒューマンスケール

 

昔の街並みを散策していると感じがいい。

建物に親しみやすさを感じる。

しかし、都会の街を歩いていても、その親しみやすさはなかなか感じられない。

これはヒューマンスケールによる差だ。

 

昔の建物は背が低く、2階建ての建物もそのままズドンと立ち上がることはなく、

道路に対して手前部分の1階を飛び出させ、下屋を設け、

その奥に2階部分が立ち上がっている。

ときには人が最初に入る入り口に門扉を設けるなどして、

高さを人の目線に合わせるなど、

人を出迎えるための工夫、しつらえをしている。

まさしくヒューマンスケールである。

 

一方都会の街は、敷地に背の高い威圧感のある建物が並び、

建物の主張が強く、ゆとりがない。

人を出迎える大きさではなく、多くを詰め込む大きさである。

 

技術の進歩によって大きな建物を建てられるようになってきたが、

その乱立が目に付く。

昔から塔などの背の高い建物はあった。

しかし今の乱立とは違い、背の高い建物の周りには大きな余白があり、

全体のバランスが考慮されているので、主張はあるが、嫌な感じはしない。

むしろ、感じがよい。

 

商業主義の世の中でどんどん背の高い建物が建っているが、

背の高い建物だらけの街は窮屈で、視界も風も遮られる。

広い空も見えなくなる。これは明らかにいい街ではないだろう。

自分達の住むまちを親しみやすいものとするために、

全体のバランスを考えた街並み計画が必要である。

 

ヒューマンスケールの街並み。

これこそ日本の街並みにふさわしい街並みではないだろうか。